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百億人の自己実現を目指して、「人それぞれの起業法」の体系化を考えていきます。

書評「天冥の標」小川一水

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天冥の標第Ⅹ巻『青葉よ、豊かなれ』Part1-3表紙

メニー・メニー・シープという人類の箱舟を舞台にした、《救世群》たちとアウレーリア一統の末裔、そして機械じかけの子息たちの物語は、ここに大円談を迎える。羊と猿と百掬の銀河の彼方より伝わる因縁、人類史上最悪の宿怨を乗り越え、かろうじて新世界ハーブCより再興した地で、絶望的なジャイアント・アークの下、ヒトであるヒトとないヒトとともに私たちは願う、青葉よ、豊かなれと。

天冥の標10巻・17冊、ついに完結

まず初めに釈明を。

Q.何でこのブログ経営っぽいことと小説っぽいことが混ざってるの? 

A.私が経営っぽいことと小説っぽいことの両方が好きだからです。

Q.なんでタイトルは経営系?

A.小説っぽいことはたまにどうしても書きたくなった時に書くだけで、メインは経営系でいこうかなと思ったからです。

Q.たまにどうしても書きたくなった時ってどんな時?

A.天冥の標最終巻を読破した時とかです。

以上、前置き終わり。

(2020年現在、経営系は大したこと書いてないなと思ってお蔵入りしました。この記事は、今でも同じ感想になります。 天冥最高。)

書籍詳細

 「天冥の標」、小川一水著、ハヤカワ文庫出版。表紙イラストは富安健一郎氏。編集は塩澤快浩氏。

小川一水さんは客観的にはハヤカワSFが誇るこの時代の和製SF作家四天王に入る方です。ハヤカワSFコンテストのページ曰く、伊藤計劃円城塔冲方丁小川一水

www.hayakawa-online.co.jp

とはいえ森岡浩之氏とか飛浩隆氏とか超有名所のSF作家さんは他にもいるので、これは単純に書いた人の好みかなとも思います。でもなんか、好きな作家さんがそういう所で名前挙がってるとちょっと嬉しいですね。

で、主観的には小川一水先生は世界で一番好きなSF作家です。ハインライン御大、J・P・モーガン氏辺りが個人的に大好きなSF作家さんの最高峰で、小川先生はその中の一番です。

そういう風に断言できるようになったのは紛れもなく天冥のお陰で、そしてもちろん最終巻が文句なしの大傑作だったからでもあります。

富安氏は、あまりSFの表紙絵を気にしたことのない私でもすげえと思わず声を漏らしてしまうほどの圧巻のクオリティを視覚に叩きつける天賦の才を持ったお方です。ことに、このページのトップに貼ってあるⅩ巻Part1-3の屏風絵の如き連結イラストは、作中の極めて壮大なスケール感を圧倒的に表現し尽くした最高の代物でした。Twitterでも読者の皆様大絶賛。

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小川一水先生Twitterより 『天冥の標』表紙一覧

塩澤快浩氏は正真正銘名前まで含めて初めて大好きになった「編集者」の方でした。まぁ結構あとがきなんかで編集さんとのやり取りが出てきたりして、仲良いんだろうなぁってほのぼのしたりすることはありますし、電撃出身の三木氏みたいな有名人もいたりしますが。それでもやっぱり、読者にとって編集者さんというのはちょっと遠い存在だと思います。思ってました、塩澤さんを見るまでは。

詳しくは「#天冥名セリフ」タグや、その他Twitter等での素晴らしい活動をご参照下さい。一言で言うと、Twitterで読者投稿型の名セリフ推薦大会やって、そこから最終巻三冊の帯に大量採用されたんですよ。私の推薦した台詞も、全部で十個くらいかな? 採用されててとても嬉しかったです。勿論他の方も挙げていたりしたので、誰のツイートから採用されたのかまではわかりませんが。とにかく嬉しい。

Twitterでのツイートの一つ一つが天冥愛に溢れていて、こんな編集さんがいたら本当に幸せだろうなと思います。というかまず、読者が幸せでした。こちらもTwitterで大人気。

その他、印象的だとファンに人気の書店販売時の帯はブックデザイナーの岩郷重力氏が手掛けたものだとか。『#天冥名セリフ』イベントの際にはこちらの謳い文句を推薦する声もありました。

最終巻のあとがきにて小川先生がおっしゃっていたように、まだまだ他にも名前を知らない多くの関係者の方の尽力によって天冥の標は世に送り出されてきたのだと思います。一人残らず全員に、心の底からの感謝を。

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早川書房編集部、溝口力丸@marumizog氏Twitterより Ⅵ巻までの帯一覧

あらすじ

メニー・メニー・シープという人類の箱舟を舞台にした、《救世群》たちとアウレーリア一統の末裔、そして機械じかけの子息たちの物語は、ここに大円談を迎える。羊と猿と百掬の銀河の彼方より伝わる因縁、人類史上最悪の宿怨を乗り越え、かろうじて新世界ハーブCより再興した地で、絶望的なジャイアント・アークの下、ヒトであるヒトとないヒトとともに私たちは願う、青葉よ、豊かなれと。

天冥の標10巻・17冊、ついに完結

 これはⅩ巻Part3、つまり最終巻の裏表紙のあらすじですが、ここにはⅠ巻~Ⅹ巻までの全ての巻のタイトルが順番通りにすべて入っています。このあらすじを読んだだけで感動した読者も少なからず、私もそうです。

これだけでは未読の方には伝わらないと思うので、さらに引用。

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朝日新聞書評欄より 前島賢氏著

こちら、2月23日の最終巻発売日翌日に掲載された朝日新聞の書評記事です。Twitterで検索すると思わず撮られた紙媒体の写真も。正直、これを見て朝日新聞の好感度がハネ上がりました。副作用です。

そう、SF満漢全席。

天冥の標という作品を表すのに、これほど相応しい言葉もそうはないでしょう。SFというジャンルが内包しているすべてのもの。すなわちハードにソフト、SFガジェット、純粋物理学、倫理哲学、宇宙論、ヒトとは何か、生命とは、人種差別問題、戦争問題、パンデミック、隔離的環境、AIの自我、生物多様性、意識の在り処、少年的な息も吐かせぬ胸躍る冒険、少女的な甘く切ない恋愛の機微、大人の厳しく苦しく逞しい社会的努力、その他のあらゆるものと、そしてセックス――他者と関わる、ということ。

そのすべてが、天冥の標には詰まっています。もっと簡単に言うなら、

Ⅰ巻はオーソドックスな惑星入植後世界の動乱。

Ⅱ巻は現代舞台の世界的パンデミック事件。

Ⅲ巻は宇宙時代の、胸躍る冒険と戦いのスペクタクル。

Ⅳ巻はセックスと性哲学と性愛を歴史上最も深く探究する、思考探究の物語。

Ⅴ巻は農業と宇宙海賊の忘れ形見な冒険譚と、6000万歳の情報生命の半生。

Ⅵ巻はボーイミーツガールに始まり、太陽系文明すべてを呪う絶望の行く末。

Ⅶ巻は子供と機械だけで、人類文明すべてを存続させる、地獄の果てに掴み取るもの。

Ⅷ巻はⅠ巻にて秘されてきた、始まりにして終わりの世界の秘密を物語る解明編。

Ⅸ巻は秘密よりもなお深い、異なる他者を知るための旅。

Ⅹ巻は宇宙の数え切れない諸族と共に、さらに先の光景を見るための終着地。

……後半にかけて感情があふれまくっていますが、これはかなりわかりやすく書いた形だと思います。多分未読の時に自分がこれを読んだら、多少なりとも読みたくなる、はず。十年がかりの大作で、しかもきっちり最後まで、決して尻すぼみや迷走することもなく仕上げてありますからね。神の御業――と言いたくもなりますが、違います。最終巻のあとがきにあったように、これは数多くの関係者の方々と小川先生の血と汗と魂を削るような努力の末に生まれた大傑作です。全知全能の神様が、片手間に創った代物なんかじゃ断じてありません。だからこそ素晴らしいんです。

極めて個人的にですが、これはⅠ巻、Ⅱ巻、Ⅲ巻、Ⅳ巻、Ⅴ巻、Ⅵ巻、Ⅶ巻、のうちどれか、つまりⅧ~Ⅹ(8~10)巻を除くどこから読み始めてもいいシリーズだと思っています。

なんせ、かくいう私もⅣ巻→Ⅰ巻の順で読み始めました。多分日本に私だけじゃないでしょうか、そんなアホな読み方したの。elonaスレで「Ⅳ巻めっちゃエロいよ! えっちなアンドロイドだよ! 凄いよ!」と勧められて興味を持ったのがきっかけだったせいですが、結果的にはドハマりして現在に至ります。

要するに天冥って「あらゆるSFの魅力がそれぞれ詰まった重箱」なので、まずは食べたい物から味見してみてもいいんですよ。1~7巻までなら主要キャラはわりと初登場なので、さほど読んでて困ることもありません。上の巻ごとの一行あらすじで「あ、自分の好きなジャンルだな」と思った巻からつまみ食いして、それから全部読むのは全然アリだと思ってます。

というか、天冥って先に進めば進むほど面白くなるシリーズだって言われることもあるぐらいで。それはもちろん過去の積み重ねがありつつ、小川先生の筆力の上限なき向上もあるからなのでしょうが、良くも悪くも「Ⅰ巻初読がシリーズ一番の感動」って作品ではありません。まぁシリーズ物でそういう作品はまずありませんし、Ⅰ巻に撒かれた伏線の量は無限大なので後から百回ぐらい読み返せます。読み返せますが、それはあくまでシリーズ全部にハマったからこそ味わえる楽しみで。

だから私は、「自分の好きな所から入っていいんだよ」と言いたい派です。スターウォーズどれから観る論争とかFateどれからやる論争とかにおける異端者の立ち位置、とにかくまずは好きになれ! それ以外は全部それからだ!派閥です。

色んな所で言ってますが、天冥のメインテーマって『多様性の肯定』なんですよ。あらゆるものを、ありのままに。だから、そういうぶっ飛んだ読み方もある意味天冥への触れ方としては「らし」くてアリなんじゃないかな? と思います。

この作品のここが最高!

何故か以前の書評には一番下に批評というわけのわからない偉そうな項目がありました。多分思春期特有の若気の至りだと思います。消します。消して、どうせ大好きな作品にしか書かない書評らしく自分の好きなだけ作品を褒め称える項目を代わりに入れておきます。

構成力

まずは、とにかく構成力が凄い。十年ですよ? 十年かけて十七冊書いて、それでまず話を破綻させないだけでも超人的な構成維持力です。普通の人間ならあれ十年前何考えてこれ書いてたんだっけって忘れます。

その上、上記のようにあらゆるジャンルが一シリーズに纏め上げられているわけですから、変わる変わる別作品を書きながら全体すべての統制を取っていたようなものです。

しかも。時間的なギミック、空間的なギミック、人間関係的なギミック、SF技術的なギミック。読者を騙し欺き「そんなまさか!」とあっと驚かせる仕掛けが天冥には縦横無尽に、シリーズ全体に張り巡らせてあります。

伏線回収のスケールの壮大さ、緻密さ、質と量。それらの総合において天冥以上の作品を私は知りません。例えば緻密さにおいてなら極めて高度なミステリ作品が競合となりますが……さすがに、6000万年スケールで語られるトリックは、推理小説と呼んだらノックスやヴァン・ダインに叱られてしまうでしょう。SFの特権ですね。

キャラクター(人物造形)

イサリちゃん可愛い。

SF史上最も可愛いヒロインだと勝手に思ってます。これは流石に、ライトノベルの執筆経験がある小川先生のキャラ造型が私の趣味にぶっ刺さった側面が大きいですが。古典SFの偉人達の、例えば夏への扉のリッキィとかもすごい可愛いです。とはいえ現代日本人の若者的感性とやらをスナイプされてはそれ以上に堪らない、といったところで。

最後だから言いますが、脳内ではずっとFateイリヤのイメージで読んでました。いや、公式には褐色肌で頬に冥王班ありますし、強いて言えばむしろクロエ寄りで全然違うんですが。まぁでも小説における視覚的イメージってとにかく没入できる形であることが大事だというのが個人的主義です。横溝正史御大の八つ墓村の典子とか想像力の限界まで可愛く想像して読みましたしね。おっと横道。

何はともあれ、とにかくキャラもそれぞれ臨界まで魅力的と言っていいと思います。1巻から登場し、7巻以降の主要キャラでもあるカドム、イサリ、アクリラの三人の絆はもちろんのこと。三桁を超えるキャラクターが登場しながら、魅力的なキャラを挙げていけば尽きることがありません。

寛容ですべてを包み込むような心と大して強くもない身体の医師がいれば、可愛らしくも成長を続け願いを背負う強靭な甲殻少女もいる。勇気と好奇心で陽気に戦う《酸素いらず(アンチ・オックス》がいれば、人に尽くし愛を謳いながら自己を問う《恋人たち(ラバーズ)》がいる。宇宙を渡り6000万年を生きた胡散臭くて人間的な情報生命体もいれば、匂いその他で共意識を形成して個と群体で生きる、綺麗で根性のある小さくて大きな異星生命体もいる。何もかもを失い世界と病を敵に回し、それでも立ち上がった最初の女の子がいれば、最狂にして最強の復讐鬼となった誰かの妹もいる。

あらゆる人々の人生が、そこには描かれています。多様性を奉じる小川先生のやり方として、誰一人として手を抜かれることなく。おそらく作中で描かれていない、一度出たきりのキャラクターの人生さえ、小川先生の中にはきちんと用意されているのではないでしょうか。

物語性

もう単純にすごくすごく面白いです。

メッセージ性とか小難しいこと考えず、SF趣味とか一切理解できず、エロは苦手で複雑な概念はよくわからない――という人にも勧めたいほど、面白いです。

むしろ物語部分が面白くてハマって、そういう諸々の要素に後から目覚めていく、ということが十分起こり得る作品だとも。大抵、「最初の一作」がありますからね、何らかの趣味に目覚めるには。天冥はその「最初の一作」になり得るに足る作品です。もしハマったのなら、間違いなく。

エンターティメントにおいてはエログロナンセンスや起承転結序破急などなど色んな公理が提唱されていますが、多分大体満たしてるんじゃないかなと。溜めて溜めて一気に解放のカタルシス! とか本当の本当に絶望のドン底まで落としてからの……とか。期待に応えて予想を裏切る、とか。

本当に、何もかも大満足のストーリーでした。

テーマ(メッセージ性)

これについては、好む人とそうでない人がいるかもしれません。「娯楽にメッセージ性なんて求めない」、という意見にも一つの理がありますし、「作品の面白さと主義信条は別物だ」、ということもままあることです。

けれど本当に優れた作品は、望むと望まざるとに関わらずメッセージ性を獲得してしまうものだと思います。何故なら、人の心を動かしてしまうから。感動したら、作者が何かを想っても想わなくても、人はそこから何かを受け取ってしまうものだと思います。

そしてこの作品からは、(SFの全部が詰まっているので)本当にたくさんのことを読み取り、受け取ることができます。人類の未来を夢見ることも、誰かとセックスしたいなぁと思うことも、侵略的拡大戦略の強大さに感服することもできるでしょう。

とはいえ一番の主題は、やはり上に挙げたように『多様性の肯定』だと思います。『生命の肯定』、という風に表現した読者の方もおられました。あらゆる生き方、価値観、在り方、戦い方、考え方、それらすべてを肯定する。消極的な受け入れというよりも、積極的に素晴らしいものなのだと讃える。そういう精神が、この作品からは伝わってきます。

私が全面的に天冥の標という作品を愛しているのも、この『多様性の肯定』が自分の思想とすっかり合致していたという部分が小さくないとも思います。グローバル化や性的、思想的、人種的その他のダイバーシティの肯定が叫ばれるこの時代。それが本来いかに難しく、困難を伴い、けれどそれでもなお成し遂げる価値のある行為であるか。それが、本作ではヒトの表現できる限界まで、いや限界を超えて詰め込まれています。 

 読了感想

『天冥の標』出版に携わったすべての関係者の皆様、本当にありがとうございました。

まずは、とにかくそれですね。塩澤さんも引用されていた、おそらく現時点で一番有名な天冥の感想記事(管理人さんは天冥完結後の小川先生対談会で聞き役も務めるすごい方)のおっしゃる通りです。

huyukiitoichi.hatenadiary.jp

 人生で何度か、一生忘れられないレベルの傑作を読み終えた(やり終えた)後に、そういうことはありました。感謝の言葉しか出てきません。「お前はこれを読むために生まれてきたんだ」と言われても、なるほどそりゃ産まれる価値があったわ、むしろお釣りがくるよと思うほど。しかもそれが複数あるというのですから、なんかもう人生って素晴らしいですね。産み落としてくれた父母とすべての祖先に感謝したくなります。

この作品が始まったのは十年前。私がこの作品に出会ったのは数年前でした。後半からではありましたが、リアルタイムで作品を追えたことは非常に大きな喜びでした。このエントリでも端々で作品外のファンや関係者様の動向について記していますが、それは書き残して記録する価値のあることだったと思うからです。

いつかこの記事を読んで天冥の標を読み始めたり、天冥の標を読み終えた後にこれを読んで「ああ当時はこんなことがあったんだ」と感慨に耽ったりしてくれる読者がいたなら、同じものを愛する読者としてこんなに嬉しいことはありません。読後の感動をこうして言葉にするだけでも100%の楽しさと嬉しさがあるのですから、それはもうたった一人いただけでも100%超えの喜びです。

そして、けれど。きっと誰もがこの物語を、私と同じように感じるわけではないのだろう、とも思います。アマゾンレビューで★1をつける方もいる。それは、決して間違いなどではないのです。その価値観を、肯定があれば否定もあるという多様性そのものを肯定することが、この作品の本質なのだろうと、私は思います。

だから、あなたも触れてみて下さい。

天冥の標という、一つの物語を。

この苦しい旅路に飽きず、さらに先の光景を見たいと願ってくれるのならば。

おめでとう。もう、やめていいのです。あなたは。
――この苦しい旅路に飽きて、さらに先の光景を見たいのでなければ。
第Ⅹ巻『青葉よ、豊かなれ』369ページ 拡散時代(バルサム・エイジ)を前に 小川一水
#天冥名セリフ

 *1

*1:画像は先端@tip_of_pole氏Twitterより引用

ガソリンスタンドの衰退と生存戦略-JXTGホールディングス×出光興産×コスモ石油-

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(JXTG公式HPより引用)

はいどうも、お久しぶりというより、多分ブログ作った当初の読者さんはもう皆無じゃないでしょうか。Kishibaです。

開設当初に食中毒の如く患っていた病み病みの実を無事体内で消化してデトックスできたので、デザインは気に入っていたこのはてブロを今の気分に合わせてリニューアルオープンすることにしました。

今後は作品系と経営系のトピックをメインに、わりと自由に書いていくつもりです。

以前すごい適当&勝手に起業家さんの事例を参考にケーススタディもどきをTwitterでやって纏めたりしましたが、このカテゴリは大体そんな感じのノリです。

togetter.com

ゼミの教授のお陰もあってか、ケーススタディの類をやるのは結構好きになってきたので、息抜きにちょくちょくやっていきたいと思います。

 

 

で、今回のテーマはこれ。

 テーマ:ガソリンスタンドの興廃と生存競争史

元ネタというか、興味を持った理由はここからです。

togetter.com

なんかやってみたいなーと思ってた所にちょうどバズってた記事で興味深いのがあったので、モチベも上がるし丁度いいやと最初のターゲットに選んでみました。

当たり前ですが、当該企業様や名前を挙げた企業・団体様への誹謗中傷等の意図は一切ございませんのでご了承を。

今回の企業

JXTGホールディングス株式会社

ブランド:ENEOS

上場区分:東証一部上場、名証一部上場

売上高:10兆3010億7200万円(連結・2018年3月期)

純利益:3619億2200万円(2018年3月期)

従業員数:3万5085人(連結・2017年3月末)

創業年:2010年4月1日(経営統合)

出光興産株式会社

ブランド:IDEMITSU(出光)・昭和シェル石油

上場区分:東証一部上場

売上高:3兆1,903億47百万円(連結・2017年3月期)

純利益:881億64百万円(2017年3月期)

従業員数:8,955名(2018年3月末)※臨時就業者を除く

創業年: 1940年3月30日

*1

コスモ石油株式会社

ブランド:コスモ石油

上場区分:東証一部上場、名証一部上場

売上高:2兆383億14百万円(連結・2016年3月期)

純利益:304億69百万円(2016年3月31日現在)

従業員数:6,359名(連結・2016年6月現在)

創業年:1939年(昭和14年)9月4日(大協石油株式会社)

 どれも言わずと知れた石油産業におけるインフラ系超大企業。出光興産なんかは百田尚樹さんの『海賊と呼ばれた男』でも有名ですね。

統廃合を繰り返して事業規模を拡大させていくスタイルは、扱える資源の規模が企業価値に直結するエネルギー企業においては世界的に共通であると言えます。

Fortune社が発表している世界の企業売上高ランキングのトップ10においても、

第9位 エクソン・モービル 業種:石油 売上高:26.9兆円
第8位 BP 業種:石油 売上高:26.9兆円
第5位 ロイヤルダッチシェル 業種:石油 売上高:34.3兆円
第4位 中国石油天然気集団 業種:石油&ガス 売上高:35.9兆円
第3位 中国石油化工 業種:石油 売上高:36兆円

*2 

 と、実に半分の5つの企業がエネルギー系インフラ企業。

ただしこれらの企業は時価総額ではエクソン・モービル社を除いてさほど上位ではありません。時価総額は株価×発行済株式数によって算出され、主に成長性・将来性の指標になると言われています。

現代の国際市場において最も成長著しいのがGAFA(GoogleAppleFacebookAmazon)に代表されるIT企業群であることを鑑みれば、その対極に位置するインフラ企業の成長が鈍化している状況にも一定の理解が示せるかと思います。

資源はモノであるため放っておいても消えて無くならないという強みはありますが、アイデアがそのまま大利益に変換可能なITほどの成長性は、少なくとも現在はないのでしょう。

また、国内のガソリン需要は電気自動車の普及などに伴い、年率3%前後の減少が続いています。経営統合が推し進められる背景には、やはり上記二つの要因などによる経営不振の兆しへの対抗意識があるのだと思われます。

ちなみに世界売上高トップ10企業のうち、ロイヤルダッチシェルはまんま昭和シェル石油の元親会社、エクソンモービルはJXTGのTとGの由来である東燃ゼネラル石油の元親会社です。その辺りの歴史はTogetter記事のコメント欄などに詳しいので、こちらでは割愛。

注目するポイントと理由

「石油系インフラ企業の経営統合

「なんで石油系インフラ企業は経営統合をするんだろう? 」という、そもそもの疑問。

同じM&Aであっても新規事業開拓に必要な技術・ナレッジを求めてであったり、競合他社に対する敵対的買収であったりと理由は多岐に渡ります。

Twitter上で2万RT&4万いいね!もの話題となった克 典@kamogawaPisuke氏が作成した下の図を見ても、インフラ企業が同業他社との経営統合を推し進めてきたことは一目瞭然。

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(克 典 @kamogawaPisuke氏より引用)

単に競合する企業を市場シェアを奪い合って併呑してきたというだけでは説明がつかないほどの、積極的な統合の歴史です。

 

第三次産業革命が叫ばれ、IoT、そしてAIがしきりに世界を変えると言われるこの時代。情報を統べるGAFAの対極で物理資源を扱う石油系インフラ企業は、一体どのような戦略を取っているのでしょうか?

フレームワークによる経営戦略分析

使用するフレームワーク:基本競争戦略、3C分析、4P分析、アドバンテージ・マトリクス

経営戦略を分析していく上でその難易度を格段にわかりやすくしてくれる経営・経済学フレームワーク。今回はそれらのうち基本競争戦略、3C分析、4P分析、アドバンテージ・マトリクスの四つを使っていきたいと思います。

マイケル・ポーターの基本競争戦略において、今回の事例はもう悪即斬!と言いますか飛んで火に入る夏の虫と言いますか(ノット中傷)、まさしくコストリーダーシップ戦略そのものです。

売っている商品が同じ石油精製燃料(レギュラー、ハイオク、軽油)であり差別化が事実上ほぼ不可能な以上、値段と地理的な条件で勝負する他にありません。

マーケティングの4Pこと4P分析においても、「Place」=流通に関わる地理的な条件は出店数でカバーするしかありません。「Promotion」=販売促進はエネゴリ君ががんばってくれていますが、彼一人に大企業の命運を背負わせるのはいささか酷です。「Price」=価格に関してがやはり争点です。「Product」=製品は同じ物なのですから。

しかし価格競争はやればやるだけ薄利多売となり利益は下がる。ガソリンスタンドの出店数をお互いに増やしても、施設のコストがかさむばかりです。

お互いにシェアを奪い合うために無茶をしても両方がダメージを受けるばかりで、談合でもしようものなら独禁法に引っ掛かって大ダメージ。

3C分析で言えば、「市場(customer)」=石油資源の需要は年率3%前後の減少。

「競合(competitor)」=同業他社は強豪ばかり。差別化も困難。

「自社(company)」=数多くの社員と償却前の設備を切り捨てられない。

 ということで、最早いかんともしがたいといった現状です。急激な変転ではなくゆるやかな需要減少であるのが数少ない救いと言えるかもしれませんが、こうなったらスケールメリット(規模の経済)を万全に活かすべく、敵を減らすしかありません。

エネルギー産業においては製造業のように製品そのものの材料原価などにコストダウンを図ることはできないものの、石油の精製に必要な精油所やガソリンスタンドの店舗の減価償却を行おうとした場合、同じ地域に競合が存在すればそれだけ設備投資に対する利益の還元が少なくなります。その損失は、この差し迫った状況においては致命的です。

アドバンテージ・マトリックスにおける右下らへん、規模型事業に石油産業全体が位置しているわけです。製造、流通、販売というすべての点でコストリーダーシップを図ることを選ぶ、というよりも余儀なくされているために、暢気に競合なんぞしている場合じゃなかったということですね。 

市場(マーケット)への推定適合率

推定適合率: 51%

明確な誤りでこそないものの、それが最善策かと言えば……という意味でこの数字。大盛況のIT産業がマーケットを牽引する形で新戦略を次々と打ち出していることに比べ、石油産業では市場に「合わせ」に行かざるを得ない状況です。

今後の予測

苦肉の策とはいえ、現実的には経営統合以外に選択肢がない故に間違った選択ではないのでしょう。けれども根本的に石油需要の減少が続けば根本的解決とは言えず、先延ばしの延命策という厳しい表現さえ残念ながら当たらずとも遠からず。

若者の車離れだけではなく電気自動車の普及によるエコ社会化というプラスの側面があるだけに、その裏側で起きる石油産業の苦戦を一概に否定もしづらいです。

鎌池和馬先生の『ヘヴィーオブジェクト』では石炭にSF的組成加工を施すことで未来の超効率燃料として利用していましたが、そのぐらいの劇的な技術的・社会的変化がなければ石油産業がすぐに蘇ることは難しいのかもしれません。

いつか、石油に新たな需要が生まれるような出来事が起きるのか? それは神のみぞ知るところです。

 

以上、石油業界の経営統合戦略に関するケーススタディでした。

*1:

平成29年3月期決算短信(出光興産)

http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2017/170515_2.pdf

真面目に脚注つけようかと思いましたが、今回は疲れたので基本それぞれ引用で。やる気がある時はつけます。参考程度にどうぞ。

*2:

『世界企業の売上高ランキング 日本企業は?【2018年版】』2019年2月10日アクセス.

https://venture-finance.jp/archives/4042

 Fortune Global 500 List 2018 』2019年2月10日アクセス.
http://fortune.com/global500/

書評「少女不十分」西尾維新

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……あった。

ひとつだけ、あった。僕にもできることが、僕だからできることがあった。そうだ。作家志望の大学生である僕だからこそ、Uのためにできることがあった。

やっと見つけた。

ついに見つけた、ひとつだけ。

――『少女不十分』主人公

 ああ、最高。

書籍詳細

「少女不十分」、西尾維新著、講談社ノベルス出版。イラストは碧風羽。

西尾維新の代表作シリーズになんかこれっぽっちも関係なく、縁もゆかりも存在せず、ただただ独立して存立している一冊の書籍です。

でもまあ言ってしまえば、関係がないわけでもないのでしょう。

これは総括であり、統合であり、決着であり、通過点なのでしょうから。

西尾維新という作家の、十年間の。

あらすじ

作家志望の大学生がいた。彼はどこまで行ってもただのそこらの作家志望の大学生で、少しばかり文章を書くのは得意だったけれど、だからといって小説を書くのは得意ではなく、なので当然のように出版社に原稿を送りつけては落選することを繰り返していた。

彼は欠陥品だった。異常を隠して変人の振りをしている、どこにでもいる大学生だった。人と共感する心に欠け、同情心を忘れている、そう自分を捉えていた。それは実際にはよくあることなのだけれど、十年経った今でも自覚できてはいないらしかった。そう、作家となった、十年後の今となっても。

作家志望が作家となったのには、ある契機があった。それはどうしようもない出会いで、言い表しようもない事件だった。そこには少女が出てくるけれど、それはどう語ってもラブロマンスではなく、そもそも物語ですらなかった。ただの、事件だった。

作家志望の大学生は、ある日ランドセルを背負った小学生がトラックに跳ね飛ばされるのを見た。それは彼にとってままあることで、特段彼の人生を変えるほどの出来事ではなかった。交通事故と縁深い彼にとって、人が車に轢かれることも、そして死ぬ事も、それほど珍しい出会いではなかったのだ。

だがそれを決定的に重要かつ忘れようのない出来事、言い換えれば「トラウマ」として彼の心に刻みつけることになったのは、その場にいたもう一人の少女の存在だった。彼女は隣を歩く同級生に並んで、ゲームをしながら歩いていた。

結論から言ってしまえば彼女は小学四年生の不十分な少女で、普通のふりをしている、どこにでもいる少女だった。けれど彼女には、守らなければならない約束があった。おぞましくて不自由な、約束があった。だから。

十年前、彼は少女に監禁された。

読了感想

冒頭にわかりやすく大きな詐欺があって、それが詐欺だと気付くのにさしたる時間はかからないのだけれど、でもだからこそそのせいで、この小説の本質を見つけるのに少しばかり時間がかかってしまう。かからされてしまう、作者の思惑通りに。

……さて、いい加減このテンションも止めておきましょうか。西尾維新先生の著作を読破すると大体厨二病がぶり返したようなテンションの文体と思考になってしまいますが、この本の面白さを伝えるのにはきっとそれだけでは足りないような気もしますから。

先に、というほど先でもなくむしろ中盤に書いておきますが、とても、とてもとても面白い一冊でした。これまで西尾維新という作家の著作はおよそ20冊から30冊の間ほど読んできたと思いますが、その中でも最高峰の一作でした。というか、好みの問題から言えば最高でした。最高最高、超最高。言うことなしです。

ですが何も言わないとこの素晴らしい本を宣伝できなくなってしまうので、というか読み終わったばかりのこのテンションの高さを発散できなくなってしまうので、何かしら言い散らし、書き散らしたいと思います。

例えばまずは装丁の話になりますが、だいぶ凝っています。講談社ノベルスの装丁が凝っているのは珍しいことではないですが、この本、タイトル部分が特殊なインクで厚塗りされています。しかもご丁寧にも錆びた鉄のような、独特なフォントまで作って。それだけ、出版社側もこの作品の持つ力を感じ、そして作品に力を注いだのでしょう。

イラストも素晴らしいです。イラスト担当の碧風羽氏はゲームのシャイニングシリーズなどにも関わった著名な方のようで、存分にイラストの力を発揮し、作品世界に彩りを添えていました。惜しむらくは、少しばかり読後の印象とイメージが違ってしまっていることですが……これをイメージ通りのイラストで描いたらまた失敗になってしまうでしょうし、難しい所です。

面白い小説はいつ読んでも面白いものですが、しかし出版された当時からこの本の存在を知っていて、けれどもイラストの重そうなイメージと『この本を書くのに、十年かかった』という意味深なキャッチコピーのせいで、どっしりと腰を据えて読まねばならないような気がして、手を出せなかったのは少しだけ後悔しています。どっしりと腰を据えて読みたいぐらいの本、というのはまったく否定しませんが。

ところで、このお話のヒロインは小学四年生の少女(通称U)で、同時に作中で起きる事件の犯人でもあります。主人公も心理の読めない少女に最初は恐れを抱き、何度か気を許してはやはり戦慄するということを繰り返しているわけですが、でもやっぱり彼女は小学四年生の女の子なわけです。

もうめっちゃ可愛いです。中盤からイラストや漫画版のデザインのような(あ、今どうやら漫画版がヤングマガジンにて連載中の模様。単行本は購入するかどうか検討中です。書店で漫画版の冒頭を立ち読みしたのが改めて積んでいた原作を読むきっかけになったので、漫画版には感謝しています)、恐ろしさや不気味さはまったく感じませんでした。あくまで等身大? の小学生の少女、いや幼女の、ちょっぴり歪んだキャラクターとして、もしも自分が主人公だったらまず理性が保つかが心配だなぁ、と変な読み方をしていました。

……いやでもだって、小学四年生の女の子と、一つ屋根の下で一週間ですよ?しかもお腹空いたって言ったらわざわざ自分の全ての栄養源である給食を持って帰ってきて、全部くれちゃうわけですよ? しかも監禁までしてくれる! これで惚れない奴がいたら男じゃない! ……いえまぁ、変態の謗りはわりと甘んじて受ける覚悟ではありますが。

逆にいつでも逃げ出せるゆるっゆるの監禁生活に際して、「なんでさっさと逃げ出さないんだよ!」的なツッコミは全然しようと思いませんでした。だってそりゃあ、ねぇ? 大学生で、特に単位の心配もなく、心配するような友達がいるわけでもなく、衣食住のうち少なくとも食は保障されていて。

それで大学サボってJSに監禁もとい飼育? されたいって思うのは、わりと自然な感想のような気がします。作中で散々ストックホルム症候群だなんだと語っていましたが(作者の西尾維新先生はやたらとそういう用語を使うのが好きですが)、そんなのよりもよっぽどわかりやすい理由だと思います。幼女可愛い!

なので最後の方での展開は、まぁそうなるんだろうなぁと思いつつも、いやいやちょっとヘタレすぎでしょうと主人公に言いたくならないでもなかったです。もう少し長く関わってみてもよかったんじゃないかな、と。西尾ヒロインの中では、トップクラスで危険性も異常性も薄い、普通の可愛い女の子でしたし。

だからこそ、ラスト2ページでの展開は、やられた! と素直に思いました。流石は天下の西尾維新、本人の書く話は特にそんな展開ばかりでもないのに、主人公がずっとそういう結末を書き続けてきた作家という設定も、そのまま伏線だったのだなぁって納得せざるを得ませんでした。

いやもう最高オブ最高アンド最高です。

人類最高、幼女最高、作家最高。

こんな話を書きたいなぁ。書かなくちゃ。

まとめ

 不十分でも無関係でもない。

十分すぎる人間関係でした。

 『きみの人生はとっくに無茶苦茶だけど……、まあ、なにも、幸せになっちゃいけないってほどじゃあないんだよ。』

ああまったく、何の異論も反論もなく、実に実に、その通りの事実であります。

書評「人類最強の純愛」西尾維新

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「これからどうなるのかしら」

三度目になるみよりちゃんの疑問に、あたしは足を組み替えて、まんざら気休めでもなく、こう答える。いっそ人魚にでも助けてもらおうか?声も出なくなるような、無償の愛で。

よく考えたら最近読んだ本ばっか記事にする必要もないんですが、まぁ内容覚えてるしPVに関わりそうなんで書くことにします。

書籍詳細

西尾維新著、講談社ノベルスの出版です。
言わずと知れた西尾維新氏の代表作の一つ、戯言シリーズ。その後日談であり続編の系譜と言えなくなくなくなくもない、人類最強の請負人哀川潤が主人公のシリーズ、第二作目です。
2015年に発売された一作目、人類最強の初恋もまだ記憶に新しいので、ちょっとそっちも書いちゃいましょう。
 

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人類最強の初恋

ちょうど大学サボってラノベ書いてた頃に発売されて、朝の五時に新宿のネカフェで一気読みしたのを鮮明に覚えています。
いやぁ楽しかった。
まだ4月末で、何の不安も無かった頃でしたからねぇ。早朝の誰もいない新宿を、隕石の落ちた都心と重ねてワクワクしていたのも懐かしいです。
とにかく冒頭からド派手で、人類最強が「対人」でなく「対人外」に切り替わったことを示す話でした。むしろ冒頭のドキドキ感が凄すぎて、若干竜頭蛇尾というか尻すぼみ感を感じたりもしましたが。でも面白かったです。
 

あらすじ

もはや地球人類に敵なしとなった人類最強の請負人哀川潤。あまりにも強くなり過ぎて人類規模でハブられたりはしたものの、諸々の騒動の結果哀川潤包囲網は消滅(壊滅)し、無事世界中から依頼が舞い込んでくる日々が戻ってきた。
そんな彼女の下に、久しく現れていなかった挑戦者が現れた。炎に変化する奇妙な腕を持った少年は戦闘後、喜連川博士からの使者を名乗る。世にも名高きマッドサイエンティスト喜連川博士からの依頼は、「自身の遺した最後の研究」の後始末だったーー。
マッドサイエンティストの居城、脱出不能無人島、沈没船と財宝の眠る深海。未知の世界で人類最強に襲い来る、人類外の未知の存在。そんな逆境に、哀川潤は自ら進んでワクワクしながら立ち向かって行く。
巻末付録・人類最強の被害者・人類最強と絵描き
 
※粗筋に若干の脚色があります
 

読了感想

初恋にも通じる事ですが、すごいSCP感があります。SCP、わかる人にはわかるけど知らない人は知らない、ぐらいの知名度ですが、知った後だとなんでもかんでもそう見えるんですよね。
初恋から数えて、EuclidEuclidEuclidSafeKeterって感じでしょうか。深海の人魚姫がKeterかは評価の分かれるところですが、たとえば地球最大のオブジェクトにも支配が及ぶとしたら、間違いなくKeterでしょう。敵対的ですし。
 
伝わらない横道はここまでとして、今作も面白かったです。西尾維新の作品群は完璧には追えていませんが、あの独特な台詞回しと文章に中毒症状を患っているという意味では私はそこそこの西尾厨です。伝説シリーズのクソ分厚いページ数も、あの文章に長く埋もれていられると耽溺するほどには。
一番好きなラノベ作家、西尾維新鎌池和馬のツートップなんですよね。ミーハーとかありきたりとか言われそうですし、自分でもそう思いますが。正確には西尾維新ラノベレーベルではないですけれど。
ちなみにけど、をけれどと書くのは西尾作品の特徴の一つですね。たぶんわざとでしょう。
個性があるほどファンがつく、ほぼ挿絵無しでこれだけのファンを獲得している西尾維新の文体は、マーケティングで言うところのニッチの要件を完全に満たしていますね。一部のマーケットの独占と占有。強力な戦術です、才能故に他人に真似できないところまで含めて。
 
感想ですが、最後の短編二つを除けば、やはりスケールの大きさが素晴らしいです。燃えたり死んだり生き返ったり潜ったり登ったり。それも世界中で。
グローバルなハリウッド感を愛する私にとっても最高ですね哀川さんは。最強最強。ケネディ暗殺の黒幕発覚、ただし正体は魔界神。みたいな!
 

書評「横浜ダンジョン」1巻 瀬尾つかさ

 

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書評カテゴリ、最初はアルジャーノンにしようとかもうちょっと前置き書こうとか色々考えてたんですが、もう更新開きすぎて何の意味もないので普通に始めます。

新カテゴリ、書評。
そのまんま、読んだ本のうち気に入ったものを感想と共に紹介していく場所にする予定です。
ジャンルは不定、海外文学からラノベ、漫画や経済書に新書まで何でも書いていきます。
 
では第一弾、「横浜ダンジョン」。
 

書籍詳細

「横浜ダンジョン」は角川スニーカー文庫より発売されているライトノベル。現行三巻。
著者は瀬尾つかさ氏、イラストはやむ茶氏です。
著者の瀬尾つかさ氏はファンタジア文庫にてデビュー後、一迅社など数社で十数シリーズを執筆してきたベテラン作家のようです。
寡聞にして他の作品を読んだことはありませんでしたが、広告などで文名を拝したことはあるように思います。
 

あらすじ

二十年前、突如世界中に出現した甲種空間相転移事例、通称ダンジョン。
同時に現れ始めた星操り人(ルーンハンドラー)と呼ばれるルーンに適合した赤子たち。
ルーン適性のなかった主人公の黒鉄響だが、家族共々巻き込まれた事故により前世の白の賢者としての記憶が蘇る。
それから三年。両親を失い心の傷を負った妹を助けるため、己の力と知識を隠して生きてきた響だったが、かつて横浜スタジアムと呼ばれた施設に生まれたダンジョン、"横浜大墳墓"で起きた魔物の大暴走(スタンビード)で星操り人(ルーンハンドラー)の少女を助けたことから、ダンジョンが抱える真の謎に迫っていくことになる。

読了感想

中々に面白かったです。個人的な好みとして現代SF的な要素は大好物なのですが、この作品は喉から手が出るほど読みたかった「現代でダンジョン」をメインテーマにやってくれました。
しかもスケールが国内だけに止まりません。伝聞ではありますが、エアーズロックダンジョンとかデトロイトダンジョンとかでてくる。もう最高。
欲を言えば現代兵器は完全無効でなくもう少し健闘して欲しかったですが、自衛隊が武器無効でも七階まで進行したって描写はもう人類愛好趣味をくすぐりまくってくれました。
ああ、人間最高。